|
大正~昭和初期のレトロな雑貨で 埋め尽くされた懐かしく温かい店
店主の山田孝さんは、もともと山田書店のなかで初版・限定本や浮世絵、版画を扱っていたが、1989(平成元)年に「神保町で、ここにしかないという変わった店を創ろう」と一念発起し、独立。店名を「蒐堂」とし、主に大正時代から昭和30年代までに流通した、懐かしい商品――いわゆる「レトロ」な商品を“蒐集”し始めた。
蒐集物は、メンコやカルタなどのおもちゃ類から、手ぬぐいなどの日用雑貨、うちわやポストカード、今でも使用可能なタイプライターやラジオまで千差万別。昭和初期の頃を思い出しながら、またはイメージしながら店内を見て回るだけで楽しく、時間を忘れてしまいそうだ。 中でも印象的だったのは、「引き札」の蒐集棚である。引き札とは、明治から昭和初期の戦前まで出ていた広告紙で、今でいうポスターやチラシのような存在。宣伝側が、石版で描かれた数々の図案の中から一枚気に入ったものを選び、そこにコピーを入れてもらって広告になる。図案はおめでたい絵柄だと決まっていたという話も、非常に興味深い。ここはそんな引き札を全国各地から取り寄せ、数でいえば、「うちに並ぶ店はないのでは」と店主も胸を張るほど。
ちなみに、ここでは数千円の値札がつく引き札が、他店では1万数千円の値札ついている。安さの理由は、単純明快だ。 「うちは自社ビルで、人件費も含め経費は光熱費くらいしかかかってないんですよ。ですから、こういう値段で販売できるんです。私としては、お客様が喜んで買ってくれるほうが、断然嬉しいですから」 店主の温かみのある一言が、レトロな家庭用品や雑貨を置く店に、すーっと溶け込んだ。
 |
 |
| 明治30年代の引き札。引き札には複製がないので、当然こちらもオリジナルもの。石版でしか出せない、細やかな色使いには溜息が出る。 |
|
|
|