「本の歴史」を常設展示 印刷物の変遷が見られる
現在は閉店しております。
50年ほど前に九州で創業された中野書店は、その20数年後の1979(昭和54)年に神保町へ移ってきた。神田古書センター2階の漫画部がその名の通り漫画古書専門であるのに対し、3階にある古書部では文芸・美術・歴史・科学など古書全般をそろえている。細かくカテゴリー分けされたホームページも設けており、月一回発行している『古本倶楽部』による目録販売も行っている。
広い店内のほぼ半分を占めるのは展示スペース。正面には金屏風や古地図が飾られ、ガラスケースには本の歴史が常設展示されている。奈良時代後期の『薬師寺経』から始まり、室町時代の巻物や写本、江戸初期の印刷技術が生まれた頃の版本、そして和本へと順を追って見ることができる。もちろんこれらの展示品を実際に手に取ることもできる。
「江戸前期は絵入本が肉筆から印刷へと移行してゆく転換期です。本の需要はどんどん増えていたが、カラー印刷技術は追いつかない。そこで出てきたのが、白黒印刷のものに直接着色すること。挿絵の色付けを専門にする職人もいたといわれています」 古書部を統括する専務の中野智之さんは、解説する。
奈良時代から順を追って見ていくと、現在、我々が「本」としてイメージするものの形の歴史は意外と浅く、明治時代あたりから整ってきたことがわかる。そんなことが学べるのも、この店の面白さである。 「古書店は情報を売っているわけではありません。歴史を売っているんです」
中野さんは平成15年から始まった、“地下展”こと「アンダーグラウンド・ブックカフェ」の企画メンバーでもある。これは古書をキーワードに、カフェやワークショップなどとタイアップした古書展だ。ここでの中野書店のアプローチの仕方は店舗と違ったものになるという。
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『下駄の向くまま ~新東京百景~』 |
滝田ゆう(著)/講談社/昭和53年 |
ユーモアのきいた擬音語・擬態語と柔らかなイラストの組み合わせが特徴の滝田ゆう作品。 |
『花の生涯書譜』 |
木村荘八(著)/龍星閣/昭和29年 |
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