|
民族に関する本や懐かしい駄玩具たち 郷土の文化を伝え続けるアイテムがそろう
通りに面したガラス戸越しに見えるのは、アンティークのガラス瓶やブリキのおもちゃ、1920年代のドイツの人形や戦前の時計、などといった昔懐かしいレトロな雑貨たち。一見、これが古本屋? とも思えるが、もともとこの「がらんどう」は、1985(昭和60)年に愛知でオープンした、ギャラリーを兼ねた雑貨と古本の店。それが2005年11月30日、神保町店として東京へも進出した。以前は漫画を中心にそろえるくだん書房があった場所に店舗を構える。
店主の吉地直美さんは以前から、古書会館の仕入れの市場に顔を出したり、中野にある劇場でコンサート企画を催したりと、東京へ出向くことが多かった。 「神保町のお客様たちはちゃんと書棚の本を見てくれる。当たり前のようですが本当に嬉しいですね。これを求めてここへ来たんですから」と吉地さんは話す。神保町では、愛知のように雑貨とギャラリーイベントばかりではなく、あくまでも本を増やすことに力を入れる。民族・郷土文化の本を中心として、ジャンルにとらわれず、自分の好きなものを置いていきたいという。
旅関係、近・現代の文芸書、戦前の絵本、絵葉書や地方のふる地図、写真・映画・美術の雑誌、そして昭和30年代の駄玩具など、それぞれのジャンルやアイテムが共存している。おもちゃ屋さんではなく駄菓子屋さんで売っている玩具、いわゆる駄玩具は、子どもよりも大人に人気。ブリキのピストルは種類も多く500円からそろう。その他にもメンコやおもちゃカメラ、ステッカー、かるた、すごろくなど。これらの駄玩具を、今でもオープン時と変わらない価格で販売している。
吉地さんは、敬愛する民俗学者の宮本常一やハンセン病患者の桜井哲夫、その家族らと実際に交流をした上で、彼らのほとんどの著書を書棚に並べている。作家の水上勉に関しては、著書をそろえるのはもちろん、追悼記念講演を開いたり、水上氏が生前に勘六山房にて作っていたという八重原竹紙を店頭で販売する。また、BGMは常にソウルシンガー、新井英一のCDだったりと、この店はとにかく吉地さんの好きなもので埋め尽くされている。
「これからどういう風にしていこうか、楽しみながら模索している状態です。オープンしてから毎日が楽しい。もともとは、お寺の意味である『伽藍堂』のように、子どもも大人も集まる場所になればいいな、と思って名前をつけた『がらんどう』ですから。とにかく人がふらりと立ち寄ってくれる場所にしたいですね」
 |
 |
| 『三江 文化する郷土』 |
| 吉地昌一(編)/岩槻技師業績顕彰会/昭和28年 |
| 愛知の農村文化の開拓者として知られる岩槻三江の伝記。岩槻氏は、農業を科学的に捉えて稲作の品種革命を起こし、農民という立場から民謡、三味線、能といった芸能文化を発展させた。編者の吉地昌一氏は、店主の実父。生前は詩人として活躍する一方、岡田菊次郎や二宮尊徳などの伝記の編纂に尽力した。「父の本に偶然出会えるというのも、古本業ならではの楽しみなんですよ」 |
|
|
|